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北海道文学を中心にした文学についての研究や批評、コラム、資料及び各種雑録を掲載しています

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見逃しミーハーシネマ館  1999〜2003
 なんというか、映画に嵌まっていた頃に、ビデオも借りまくっていた。

 ビデオ・グラフィティ・ノート 1999−1   1~16  

*<1>「絶対×絶命」
バーベット・シュローダー監督。マイケル・キートン。アンディア・ガルシア。
 息子は白血病。骨髄移植をしなくちゃ助からない。そこで警官のパパは服役中の凶悪な男を適合者として非合法手段を使って探し出す。晴れて手術が行われるその日、男は逃走を図る。
 さて、子供の運命は? もちろんアメリカさんですからハッピーエンドです。
 でもなあ、犯罪者だよ。この警察官は。警官も凶悪犯も子供もみんな共通したものを持つ人間であることを知っている。だから、三位一体なのだ。彼らは決して諦めない。そのおかげで、犠牲者はいっぱいでるし。施設は壊されるし。
 結局、選ばれた一人の命は地球よりも重いって映画だよ。親の愛は他人の死をも恐れない。よきパパとはいかなる人間かを教える教育映画である。

*<2>「レインメーカー」
フランシス・フォード・コッポラ監督。マット・デイモン。ダニー・デヴィート。クレア・デインズ。ジョン・ボイド。ミッキー・ローク。
 ジョン・グリシャムの原作を巨匠・コッポラが映画化。青年弁護士奮闘記。恋有り涙有りというところでしょうか。
 物語はワルの保険会社との戦いを縦軸に、若妻との交情を織り交ぜて法曹界という汚水の中を泳いでいる人間群像を描く。ただ、じっくり構えすぎていて、ちょっと飽きます。
 しかし、主人公のマット・デイモンの相棒になるダニー・デヴィート。彼が魅せます。弁護士試験には6回も落ちているというのに、法律知識はピカイチ。行動力も抜群。背が低く腹が出ていてしかも頭の毛も薄いというのに全くいい男です。キャラクターのおもしろさが光る作品です。

*<3>「惑星ソラリス」
アンドレイ・タルコフスキー監督。ドナータス・バニオニス。ナタリヤ・ボンダルチュク。アナトリー・ソロニーツィン。
 1972年、ソ連映画。噂の名作である。
 記憶を実体化する海を持つ惑星ソラリス。そこで、心理学者クリス・ケルビンが見るものは。自殺した妻ハリーであった。
 こりゃ、あれです。怪談話であり、一種の幻覚剤映画です。記憶の中に自分の愛するものが現れたら、それを本当に愛せますか。あたしゃ、ダメだな。幻想を消すか、自分を消すか。クリスのようにはいきません。
 じれるほどゆったりとしたカメラ回し。それでいて、未来都市らしい我が日本の首都高速を走るシーンはなかなか快感です。ソラリスの海の表情が不思議な感覚を与えくれます。会話もちょっとおしゃれです。ブリューゲルの絵もいいなあ。この映画って今風のバーチャル・リアルの世界を先取りした作品としても優れていると思いました。

*<4>「フル・モンティ」
ピーター・カッタネオ監督。ロバート・カーライル。トム・ウィルキンソン。マーク・アディ。
 イギリスの鉄鋼町・シェフィールドで失業中のガズ。別れた妻に養育費を払えず息子に会えなくなる危機に見舞われ、考えついたのが男性ストリップによるひともうけ。
 どうせやるならトコトン。男の魅力全部魅せます。フル・モンティ。ヤセとデブのコンビが葛藤しながらストリップという芸に、踏み込んで行くまでを痛快に描きます。
 男たちのストリップは笑えますが、一番かわいいのは子役の少年でしょうか。ダメおやじにお金を貸してくれるし、励ましてくれるし。家貧しくして孝子顕わる。ってやつか。それにしてもイギリスってのは階級社会だ。なんか労働者映画そのものだ。

*<5>「ディアボロス 悪魔の扉」
テイラー・ハックフォード監督。アル・パチーノ。キアヌ・リーヴス。シャーリズ・セロン。ジェフリー・ジョーンズ。
 キアヌとアル・パチーノが弁護士 となって、必ず裁判に導く活躍を描く。そこに妻のシャーリズ・セロンが加わり仕事にかまけて家庭を顧みないと大変だよ、となる。
 まあ、アルの正体は悪魔です。人間の一番の罪、虚栄心ってやつに食い込みます。キアヌ君はアルの磁場から抜け出そうとするのですが、良心やら妻やらを失っていきます。
 弁護士ドラマとしても、オカルトとしても、家族問題の物語としても楽しめます。結局、どんなに状況を変えようと、悪魔は勝つ、ってことでしょうか。いるよな、この社会にいろいろな悪魔が。難しいところですな、良心に従って生きるってのは。

*<6>「ピースメーカー」
ミミ・レダー監督。ジョージ・クルーニー。ニコール・キッドマン。マーセル・ユーレス。アーミン・ミュラー・スタール。
 ロシアの核兵器を積んだ列車が襲われる。そこで、女性物理学者のキッドマンとロシア通のクルーニーと組んで,核密輸グループを追うことになる。密輸先は9基はイランだが、もうひとつはボスニア? いやNY!
 女と男のコンビ。普通ならすぐベタついてしまうのだが、それを避けているのは監督が女性だからか。次々とアクションシーンが続いて飽きさせない。ボスニアの悲劇も重なって物語が単なる勧善懲悪にならないのもいい。それでいて、やはり軍人の乱暴ぶりも分かり易い。
 スピルバーグらが設立したドリーム・ワークスの第一回記念作品とか。さすがにツボを押さえたおもしろさ。ちなみに、ニコール・キッドマン。「アイズ・ワイド・シャット」で見た印象と全く違いますな。どっちがいいかは言えませんが。

*<7>「悪魔を憐れむ歌」
グレゴリー・ホブリット監督。デンゼル・ワシントン。ジョン・グッドマン。ドナルド・サザーランド。
 悪魔は接触感染するのである。そうすると、モンキーズではなくストーンズを歌ってしまうのである。やはりストーンズは反キリスト、反体制の象徴なのだ。
 でも、この映画は回りくどいぞ。ホブズ刑事と遊んだのだろうが、なんかもっとパンチが欲しいが盛り上がらない。悪魔とは、どうやら堕落天使のことで、天国を追われて人間を宿主にして生きてきたらしい。オレのような無神論者で、百歩譲ってブッディストには無縁だな。主役は誰だったのか? ありゃりゃあ、って感じだな。

*<8>「イル・ポスティーノ」
マイケル・ラドフォード監督。マッシモ・トロイーデ。フィリップ・ノワレ。マリア・グラッツィア・クチノッタ。
 チリの作家、アントニオ・スカルメタの原作をイギリス人監督が映画した。
 舞台はイタリア。ナポリ近くの島。チリの詩人パブロ・ネルーダが国外追放になり島にやってきた。漁師の息子マリオは山のように届けられる手紙を運ぶ臨時配達員になった。詩人と親しくなるうちに、マリオは隠喩を覚え詩を書き始める。そして居酒屋の娘 ベアトリーチェに詩のラブレターを送る。そして結婚。だが、ネルーダは逮捕処分が解かれ国へ帰っていった。すべてが失われたと失意に沈むマリオだったが、残されたテープから島の美しさを再発見する。
 美しい映像と音楽。抑えた表現の中に、優しさが伝わってくる。マッシモ・トロイーデはこの作品が完成した後、急死したとか。純朴な田舎のイタリア共産党員役を好演している。いるんだろうな。こういう人が、って思わせる。

*<9>「アサインメント」
クリスチャン・デュゲイ監督。アイダン・クイン。ドナルド・サザーランド。ベン・キングスレー。
 実在の国際テロリスト「カルロス」を追うCIAとカルロスそっくりの海軍少佐の姿を描く。
 物語はさほど面白くない。実在の人物をモデルにしたせいか。気持ちのいいカタルシスのないアクション映画は困ったものだ。個々のエピソードも細切れで盛り上がらない。せいぜいカルロスになりきるための地獄の特訓が見せる程度か。
 
*<10>「ボディ・カウント」
ロバート・パットマン・スプルイル監督。ジョン・レグイザモ、デイヴィッド・カルーソ。フォルスト・ウィテカー。
 いかにもインチキくさい。美術館を襲った強盗グループ。しかし、みんな仲が悪い。特にすぐキレる奴がいて次から次へと悪い方に進む。で、途中で訳有りの女を拾ってからますます男同士の関係は悪化する。
 最後は意外なオチになってまずまずです。でもなあ、なんかやっぱり軽いよな。別に重くなくてもいいが、どこかでぴょーんと跳ねて欲しい。ちょっと惜しい。

*<11>「リービング・ラスベガス」
マイク・フィッギス監督。ニコラス・ケイジ。エリザベス・シュー。ジュリアン・サンズ。
 酒のために人生落伍者になってしまった脚本家と娼婦のラスベガスでの愛の物語。
 ニコラス・ケイジとエリザベス・シューが熱演している。いい映画だよ。でもなんで娼婦なんだろうか。必ずヒモ男もいるが。
 主題は分かるが、設定がいやだな。だからオレはあまり乗れなかった。ニコラス・ケイジの酔っぱらいふりがいやだなあ。ごめんね。

*<12>「ニル・バイ・マウス」
ゲイリー・オールドマン監督。レイ・ウィンストン。キャシー・バーク。チャーリー・クリード・マイケルズ。
 サウスロンドンを舞台にイギリスの庶民の生活を描く。酒とヤクにおぼれる男たち。パブで憂さを晴らす女たち。暴力。確執。そして和解。スピーディーな画像がとっても気持ちよい。
 監督のゲイリー・オールドマンはあの「レオン」のキレデカか。いい。「ニル・バイ・マウス」の心は「口では何も言えない」って意味らしい。だから伝わるのは気分だ。父親の思い出に捧げられたこの作品は、すさんでいながらあたたかい。

*<13>「ハミルトン」
ハラルド・ツァート監督。ピーター・ストーメア。レナ・オリン。マーク・ハミル。
 スウェーデンの特殊部隊司令官を主人公にしたアクション映画。
 例によって、ロシアの核が流出する。これをKGB、CIA、さらにはPLOまで手玉に取って、われらが?スーパースター、ハミルトンが八面六臂の大活躍。ノリとしては色気を抜いたジェームズボンドって感じでしょうか。なかなかの大作です。
 スウェーデンでもこんな映画があるのですね。世界は広い。感心したのは世界観の違いですね。やっぱり、あの辺はアメリカがきらいなのね。そこのところがとっても面白くて愉快でした。もう少しエンターテイメントが欲しいというと、私はアメリカにかぶれちゃったのかしら。

*<14>「ブエノスアイレス」
ウォン・カーウァイ監督。トニー・レオン。レスリー・チャン。チャン・チェン。
 ウィンとファイ、そしてチャン。3人の男の愛の物語。ウィンとファイは喧嘩を繰り返しながら南米で暮らしている。ブエノスアイレスは香港の裏側に足の下にある。足下にありながら手がうまく届かないのが愛だ。
 奔放でルーズなウィンと実直なファイの2人の波長はなかなかあわない。もう一人の青年チャンは不思議な耳を持っていた。彼は世界の果てを見るため、最南端の岬に旅立つ。そこではすべての悲しみも捨てられると言う。仕事も変わってウィンからの電話があったが、ファイはもうやり直す気はなかった。一人美しい憧れのイグアスの滝を目指す。
 全編にアルゼンチンタンゴを中心とした官能的な音楽が流れる。そして男同士の愛の姿が描かれる。これにはいささか辟易した。テーマは人間の孤独である。それがゲイの愛を通じて描かれる。オレはどうも苦手だ。
 人間、会おうと思ったら必ずいつかどこかで会える。そうした前向きの姿勢は納得できるものだが、情に流れすぎ、悲しみの超克が紋切り型の感じがした。
 ちなみに「HAPPY TOGETHER」が英語のタイトルとか。「ブエノスアイレス」のほうが、遙かに良い。

*<15>「アサシンズ」
マチュー・カソヴィッツ監督。ミシェル・セロー。マチュー・カソヴィッツ。メディ・ベノーファ。
 老いた殺し屋が自分の技術を若い者に伝えようとする伝承芸能の世界。芸として磨かれた殺しのスタイルを受け継ぐべく2人の若者が選ばれる。しかし、一人は力不足で頼りにならず。もう一人の少年は力をセーブできず自滅する。
 絶え間なくテレビやテレビゲームがノイズのように登場する。そしてそれが若者の心をむしばみ、老人をいらいらさせる。
 正直言って失敗作である。殺しに倫理など言っているのは誤った衒学趣味以外の何者でもない。そして、伝統の世界を崩すのはマスメディアだというのはなんとも陳腐だ。魅力的な人物(私が感情移入できる人物)が一人もいないのが辛い。

*<16>「アライバル2」
ケビン・テニー監督。パトリック・マルドーン。ジェーン・シベット。
 エイリアンの地球侵略を追っていた研究者の弟が見舞われる新たな危機。秘密を知る学者らは次々と消されていく。女性の新聞記者と2人で弟のジャックの戦いは続く。気楽に楽しめるSFアクション。よくできたテレビ映画的なノリか。

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